オートバイのある私
髪長の若い神神の乗りものであるオートバイ
わが神はヘルメットと呼ぶ鬼頭型の宝冠を冠り
脛長の脚には青空いろのジーンズを穿ち
きんいろの鋲をいつぱい止めた重い長靴を穿いて
むらさきいろの神神のたそがれを疾駆する
いま わが神はたとえば劇場の裏側の石段の途中で
他の髪長の神神と 血なまぐさい謀議のまつ最中
彼等の若若しい謀議はまぶしすぎ かぐわしすぎて
石段の下を通りかかつた私には 見届けることができない
階段の下に 鋼鉄製の神の座のみが生きものじみて光つている
私はオートバイの わけてもわが神の尻と密着していた
シートの まだ尻の体温を残している部分に手をふれてみる
わが神はケンタッキー・チキンを食べ コカ・コーラを飲み
美しい尻の曙いろの割れ目から 排便するのだ
Mutsuo Takahashi ( 高橋 睦郎 ) (Fukuoka, Japón, 1937). Novelista, poetas, dramaturgo y ensayista.